パンク映画といえば誰? アレックス・コックス3部作を堪能②

『代表作「シド・アンド・ナンシー」、必見カルトムービー「レポマン」、そしてシド・ヴィシャスの使用ベースは?』

アレックス・コックスの魅力とは何か?今回はその魅力の理由を初期の2作品をもとに語りつつ、シド使用のベース、最後に最もお薦めしたいパンクSF映画の「レポマン」を紹介します。

「シド・アンド・ナンシー」

伝説のパンクミュージシャン「シド・ヴィシャス」とその恋人「ナンシー」を描いた作品。当時ナンシーの死を巡って様々な議論がなされたが、この作品の中心的テーマは別。あくまで2人のラブストーリーが中心だ。ただ、シドの放蕩生活と共に描かれるそれは、悲しくも痛々しい

主演のゲイリー・オールドマンに注目したい。どこから見ても完璧なパンクロッカーに成りきっている。その存在感は、後に「ドラキュラ」や「バットマン」で怪演し、ついに昨年アカデミー賞を取ることを予感させる萌芽であるといえよう。

シド使用のFender「プレシジョンベース」

さて、ベーシスト「シド・ヴィシャス」の使用モデルは何か?やはり予想に違わず、Fenderの「プレシジョンベース」、通称プレベだ。Fenderのもう一つのモデルである「ジャズベース」は、指弾きのテクニカルなイメージがあるが、これはその逆。つまり、ピック弾きで無骨な音を鳴らすイメージで、パンクバンドの典型的な音にマッチしている。映画でもプレベをかき鳴らすシドを拝むことが出来る。

この映画の特徴は、単なるシド・ヴィシャスのドキュメンタリーではなく、アレックス・コックスの作り出す空気感とともに、そのストーリーを味わえる点にある。後に「ストレート・トゥ・ヘル」で錚々たる面々を引き込むことになるその空気感を、この映画で堪能してみてはいかがだろうか。

「レポマン」

今回アレックス・コックス3部作として紹介する作品の1作目に当たる「レポマン」。自分としては最もお薦めしたいのが、この作品だ。なぜなら、アレックス・コックスの生み出す空気感を最も堪能できる映画だから。その空気感とは、「ユーモア・アイロニー・非日常」が、「独特の間」で展開していくもの。これこそが彼を彼たらしめるものであり、アレックス・コックス最大の魅力であるといえよう。

主演はエミリオ・エステベス。そして、債務者から車を取り立てる仕事を彼に紹介するのが、ハリー・ディーン・スタントンなのだが、それこそがこの映画のもう一つのポイント。彼の放つ独特の存在感が、アレックス・コックスの空気感に、まさにピッタリなのだ。ストーリーは、回収した車のトランクに宇宙人が入っているというパンクSFなのだが、その荒唐無稽なストーリーも、この空気感の中ではごく自然に楽しめてしまう。

音楽にも注目したい。基本的に静かな映画であるのが魅力なのだが、随所で効果的にカントリー等を絡めてくる辺りが、タランティーノの先駆けと言われる所以だろう。そしてエンディング。流れる曲はイギー・ポップで、何とエンドロールが通常とは逆に上から下に流れてくるのだ。これは、最後に宇宙に向かって車が上昇していく感覚をイメージしたらしい。自分としては、昨今のCG全盛の中で、このアナログ感が堪らない。かつてこの映画は、レイトショーでリバイバル上映されていたのだが、このエンドロールを見てから映画館の外で夜空を見上げて、妙にハイテンションになったことを覚えている。

Repo Man (Demo March 1983)
イギー・ポップ
2010/05/31 ¥200

アレックス・コックスの魅力を知るには、まずは原点ともいえるこの映画がお薦めだと思う。

 

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