80年代ソングとシティポップのルーツとは?①

『ベースラインからそのルーツを探る』

当ブログで度々取り上げた竹内まりやの「プラスティックラブ」。今回はその印象的なベースラインに注目しつつ、ルーツを探ってみることにした。するとやはり、R&Bやソウルに辿り着く。振り返れば、80年代のヒットソングの多くは、モータウンやファンクなどR&Bの影響を受けているのだ。

R&Bで面白いのは、その印象的なサウンドが、共有財産であるが如く皆にシェアされ、継承されていくこと。その結果、それが太い鉱脈の如く、後の音楽シーンに引き継がれていく。今回は80年代ソングのベースラインを通じて、R&Bやソウルのヒットソングへの影響力を探っていきたい。

まず最初にカルチャークラブの「Time」から。カルチャークラブは 自分にとって完璧に80年代を体現したアーチストだ。同時期にヒットを飛ばしたデュランデュランやa〜haなどが、後に方向性の転換とともに存在感を失っていくのに対し、カルチャークラブはまるで80年代に真空パックされたかの如く記憶に留まり続けている。

Time (Clock of the Heart)
カルチャー・クラブ
1982

さてこのベースライン、何か聴き覚えはないだろうか。そう、当ブログでも何回か特集した、竹内まりや「プラスティックラブ」だ。そのyoutube動画のコメント欄(2000万再生を記録した前回の動画)では、ベースラインへの賞賛や注目が目立っていた。個人的にも気になっていたところ、たまたまカルチャークラブの「Time」を聴いて気づいたのだった。

どちらもR&Bやソウルの影響を受けたアーチストだから、こういうファンク寄りのベースラインという共通点があっても不思議ではない。そしてさらに、他にこのタイプのベースラインで思い浮かぶものと言えば…やはり、ハーブ・アルパートの「Rise」ではないだろうか。

Rise
ハーブ・アルパート
1979

元々トランペット奏者としてヒット曲も出していた、ハーブ・アルパートのこの曲。何とインストにも関わらず、1979年に全米1位を記録している。しかもマイケル・ジャクソンの「Don’t stop〜」を蹴落としてだ。この曲のベースラインは、既にヒップホップやラップのサンプリングネタでもお馴染みのものだが、やはり元ネタにされるだけのインパクトある演奏ではなかろうか。

以上3曲は、共通のテイストを持つベースラインであるが、パクリやオマージュではなく、それぞれが独自の魅力を放っている点にも注目したい。一方次のパートでは、ひとつのベースラインが、あたかも共有財産の如く継承されている例を紹介したい。

80年代のポップソングに大きな影響を与えたジャンルに、モータウンサウンドがある。その中でもベースラインに関して言えば、Supremesの「You can’t hurry love」は外せない。どこかで誰しもが聴いたことのあるあのリズムは、どこから生まれたのか。その源流の中で、最もメジャーなポジションに位置するのが、1966年のこの曲ではないだろうか。

恋はあせらず
シュープリームス
1966

さてその後、この曲のベースラインはミュージシャンの間でひとつの共有財産であるかの如く継承され、洋学邦楽問わず非常に多くのヒット曲を生んできた。ここではブルーアイドソウルの代表として活躍したホール・アンド・オーツの80年代のヒット曲「Maneater」を挙げたい。

Maneater
ダリル・ホール&ジョン・オーツ
1982

上記の様に、このベースラインを用いたヒット曲は枚挙に暇がないが、次は敢えて、少し意外なアーチストによる曲を挙げる。イギリスのシンセバンド、デペッシュモードの代表曲「Everything counts」だ。デカダンかつポップな世界観を体現するこのバンドが、モータウンから影響を受けていたとすれば、意外だが面白い。(折しもデビュー時期のイギリスでは、ニューロマというR&Bを取り入れたムーブメントが流行っていた。)

Everything Counts (Live)
デペッシュ・モード
1983

最後に、強力なベースラインを持つ70年代ファンクの代表曲を挙げたい。Chicの「Good Times」だ。ギターのナイル・ロジャースのカッティングと共に、その後に与えた影響は計り知れない

Good Times
シック
1979

そして、この曲の影響を受けた80年代のヒット曲と言えば、クイーンの「Another one bites the dust」だろう。現在「ボヘミアンラプソディー」でリバイバル中のクイーンには、オペラ的組曲など荘厳なロックのイメージがあるのではないか。だが面白いことに、ファンクナンバーのこの曲が、チャートでは最大級のヒットに至ったのだった。

Another One Bites the Dust
クイーン
1980

次回はモータウンサウンドの影響を受けた、その他のアーチストを取り上げ、山下達郎との比較などもしてみたい。

 

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“80年代ソングとシティポップのルーツとは?①” への2件の返信

  1. カルチャークラブ”Time”竹内まりや”Plastic Love”、ベースラインが似ているとは。どちらも、聞きこんだ曲ですが、ベースまで聞いてなかった。素人の耳、反省。
    モータウンサンド、洋学史で外せないトレンドなのに、今ひとつ分からないまま。次回に、期待。
    コード進行についても、ぜひ。これまでの名曲に、共通したコード進行、あるのでは?

    1. コメント有難うございます。

      次回はモータウンの影響例を取り上げつつ、コード進行をより魅力的にする独特のコードについて、山下達郎とその他のアーチストの共通事例を取り上げます。また、是非覗いてみて下さい。

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