是枝裕和監督受賞記念! カンヌ映画祭ってどうよ?②

『タランティーノら個性派も受賞したパルムドール』

多彩な受賞者が特徴のカンヌ・パルムドール。メジャーマイナー問わずの受賞ラインナップは魅力的だ。前回はその中から、「巨匠」に位置づけられる監督とその注目作を紹介した。

今回扱うのは、特に1990年以降目につく「個性派」監督達。タランティーノ、デヴィッド・リンチ、ガス・ヴァン・サント、とその作品を紹介したい。そしてやはり是枝裕和。今作以前にも注目作があるので、最後はその作品を紹介する。

〈個性派〉編

①クェンティン・タランティーノ(1994年「パルプ・フィクション」 パルムドール受賞)

注目作品「レザボア・ドッグス」(1992年)

パルプ・フィクションや キルビルのような派手な演出はない。本作のタッチは静かでドライなのが特徴だ。それが粗野なヤクザ者の男達を描くのにマッチしている。いやむしろ、その凄みを増すといっていいだろう。サスペンス調の展開に、地味な演出と陽気な音楽が絡み、ワイルドさの中にもユーモアとペーソスを感じさせるのが特徴だ。

さらに俳優達にも注目したい。主演のハーベイ・カイテルの怪演はまさに印象的。「タクシードライバー」などに出演していた70年代に比べ、地味な時代が続いていたが、本作で復活。本人が出資もしているようで、メジャーな映画より、この手の映画の方が性に合うのかもしれない。 ちなみに監督タランティーノ本人も出演している。タランティーノの他作を見ているが本作がまだの人は、是非見て欲しい。

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②デヴィッド・リンチ(1990年「ワイルド・アット・ハート」 パルムドール受賞)

注目作品「イレイザーヘッド」(1977年)

カルト映画を挙げれば必ずや名前が出るであろうこの作品。内容は悪夢映画。淡々と乾いたトーンで描かれるのがその特徴で、嫌な場面なのに冷静に鑑賞している自分がいることに気づく。そうなるともう完全にリンチワールドに引き込まれている。

リンチワールドの中で、自分は完全に異物と対峙しているはずなのだが、そこでは何が異物なのかが分からなくなってくる。その結果、気味が決していいわけではない映像を見続けてしまうのだ。この感覚を何て形容したらいいのか そんなことをぼんやり考えながら見てしまう映画だ。

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③ガス・ヴァン・サント(2003年「エレファント」 パルムドール受賞)

注目作品「ドラッグストア・カウボーイ」(1989年)

主人公の見る幻覚世界を描いた本作。やや荒い質感の映像が、幻覚と孤独に苛まれる主人公の心象風景にマッチしている。現実逃避の挙句、悲劇を迎える内容は、前回紹介したフェリーニ の「8 1/2」と通じるところもある。だがその描き方はドラマチックなものではなく淡々としているのが特徴だ。だからこそ、虚しさや切なさがより伝わってくるのだ。

主演のマット・ディロンはそれまで二枚目俳優のイメージが強かった。「アウトサイダー」などにも出演していたが、その後は存在感が地味だったはず。本作では、所謂二枚目アイドルのイメージはなく、演技派に脱皮した作品といえよう。その点で、上に挙げた「レザボアドッグズ」のハーベイ・カイテルと通じるところがあるのも面白い。

〈受賞記念〉

是枝裕和(2018年「万引き家族」 パルムドール受賞)

注目作品「誰も知らない」(2004年)

当時「まさに誰も知らなかった」柳楽優弥が、カンヌで出演男優賞をいきなり取ってしまい話題になった作品。タランティーノも、その年のカンヌで一番印象に残ったのが柳楽の演技だったと言っている。

実際にあった事件を元にした内容なのだが、本作の描き方は、善人と悪人を分けようとするスタンスではない。もちろん、子供を置き去りにした母は社会的には悪人のはずだが、この作品ではあくまで一人の人間としてニュートラルに描かれているように見える。当然子供達の描かれ方も同様だ。だからこそ、切なさ、寂しさ、空しさが強烈に伝わってくる。

当時、封切り直後に映画館で見たのだが、登場人物達の何かに肩入れして見てたような気がする。今の自分は、もっとニュートラルな視点で見てしまうのではないか。そうすると、当時とは違った感想になるかもしれない。どんな感想になるのだろうか…また見てみようと思う。

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